“売って終わり” じゃない仕事
美郷の日常の助っ人は、背中の広い電器屋さん

清水 邦夫さん

清水電器

テレビを売って、もうおしまい、じゃないけぇ。町の人の「助かったわあ」は嬉しいよね、そりゃ。

家電をただしく売って、修理をするのが毎日の仕事。この10年は一人でそれをこなす清水電器の清水邦夫(しみずくにお)さん。最近の家電はとにかく“重量級”、冷蔵庫などの運び入れは奥さんと息子さんにも手伝ってもらって「なんとかこなしてるっちゅうかね」。

清水さんは、生まれも育ちも美郷町。高校を卒業したあと、滋賀県にある電気屋の息子たちが集まる全寮制の学校で1年間みっちり家電の扱いを学び、父が創業した清水電器で働きはじめました。清水電器が個人商店としてスタートをきったのは1960年代後半、カラーテレビがよく売れた頃。「大晦日にはカラーテレビを売って歩いて、お酒をご馳走になって帰ったなんて聞いたね」と時代のこぼれ話も。

家電をただしく売る。「田舎だから、勝手知ったる」の関係があるからこその、“ただしさ”があります。「テレビはもう一個大きいのにしないと、字幕はさらに字ちっちゃいよ、(歳なんだから)絶対見えんよ言って」。清水さんの言う通りだったわあと返すお客さんは、多くが昔馴染みです。暮らしぶりを知っているからこそ、その暮らしを考えて家電をすすめる。「時々言い合いにもなる。でも10年使うとなると...とかね。顔を合わせ続けるから下手なもん売ると文句言われちゃうし(笑)」。

売って終わりじゃないのが美郷町での電器屋の仕事。むしろ売ってからが本番です。「テレビが映らんくなった、とか、蛍光灯ががつかん、とか電話がきますよ」。コンセントが抜けていただけ、なんてこともあるそうですが、電話ではわからないので都合のつく限り見にいきます。「テレビが一晩映らんというのは寂しいだろうからね。こういう(すぐに駆けつける)仕事は、量販店にはできないこと」。行けば“ついで”の仕事もやってきちゃうのが清水さん。

最近はこんなことも少なくないそうです。「(人生の)途中は量販店で買われとったんだろうけど、またあんたのとこで買うわ、いうのも案外多いね」。ある程度の年齢に達してから、再び付き合いはじめる地元のお客さんのこと。家電を設置してもらい、折々にみてもらうのに「清水さんのところ」に戻ってくる。

家電製品なしの生活は考えられないとなると...家電とのつき合いは電器屋さんとのつき合い。「信じて買ってくれているんだろうから、一生懸命できるお世話をするっちゅうか、そういうことでしょうね」。自身の強みを問うと「いやあ、酒が強いぐらいのものかもしれんです」と、お手本にしたいほどの切り返し。背中の広さと気持ちのよさこそ、清水さんが美郷町の日常にくれる安心とあかるさなのでしょう。

清水電器

製品の購入から設置や工事、アフターフォローまで、個人店ならではの素早さときめ細やかさで美郷町民の日常を支える “まちの電器屋さん” 。「パナソニック家電製品正規取扱店」だから、知識も技術も折り紙つき。ご自宅のオール電化、リフォームもお気軽にご相談ください。

所在地:島根県邑智郡美郷町粕渕325番地
TEL:0855-75-0626
FAX:0855-75-1500

Text by Sako Hirano (HEAPS)

本記事は2023年10月の取材に基づいて構成したものです。